『時空跳躍ターミナル』のお客さま方から寄贈していただいた、オリジナルのイラストを展示しています!
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両性こたつむり様作 イオリア&スパルティアタイ コラボ小説!!
2015-07-15 Wed 21:19
 こんばんは、ボレアルです!
 両性こたつむり様から、コラボ小説を寄贈していただきました!
 なななんと、1万字を超える大作です☆
 両性こたつむり様作『イオリア物語』と、アウローラさん作『スパルティアタイ』の時空のコラボレーション!
『スパルティアタイ』の時空に、『イオリア物語』の時空から、ひとりの若者がやってきます――
 果たして、彼の目的とは!?

 とても長い作品なので、追記に展示させていただきました☆
 章ごとに視点が変わるというのも、面白い試みですね!
 展示する際に、その章が誰の視点から書かれているのか、(~視点)という形で書き添えさせていただきました。
 
 ついでに、ものすごく簡単な人物紹介をつけておきます!

医王田 理音 (イオタ リオン) 
『イオリア物語』の登場人物。
 10代後半~20代前半に見える若者。
「想像師」の力を持つが、今回はどうやらその能力を封印しているらしい……?
 表情に乏しいが、ときに冷酷さを垣間見せる。だが、無邪気な一面も併せ持つ。 
 愛用の武器は拳銃。

レオニダス
『スパルティアタイ』の登場人物。
 不死隊の隊長で、当代最高の戦士とうたわれる。
《半神》の異名を持つ、無口で無表情な男。

クレイトス
 レオニダスの情人(メイラクス)。絶世の美青年。
 常に、レオニダスのメイラクスとして相応しい戦士でありたいと願っている。

フェイディアス&パイアキス
 レオニダスの部下たち。
 かたや豪快で好戦的、かたや優しく控えめ、と性格は正反対だが、いずれも優秀な戦士。
 フェイディアスは不死隊の副隊長格であり、「フクロウ」とあだ名される。


 ――という感じです!
 実はまだシークレットな登場人物がいるのですが、それはここでは伏せておきましょう……!
 真相は、ぜひ、追記↓から!

 両性こたつむり様、このような大作を、時間をかけて最後まで仕上げてくださって、本当にありがとうございました~っ!!(拝)
「悪魔、出没」(クレイトス視点)

 砂埃とともに、乱戦する味方と敵。剣筋や矛先を受け、倒れていくもの。
 血しぶきと生臭さが、込み合っている。

 激しく繰り返す中、戦いとは無縁そうな、場違いな奴がいた。
 つぶらな瞳をした、金髪セミロングの少年が突っ立っていた。
 それは語弊だな。いつの間にか、存在していたというほうが正しいだろう。

 10代後半か、もしくは20代突入したところか。
 整った顔立ちの女……じゃないな。中性的な顔をした、若い男だ。

 何を考えているのかわからない、無表情。
 中肉中背で、背丈がそれほど、高いわけでもなく低いわけでもない。

 身なりが異質だ。上質の良い生地の、見たこともない衣類。
 軽装が好みだろうか、重装備ではない。

 戦士と言うより、女神だ。戦争に似合わなそうな。
 一応、美人に入る分類だ。男女問わず、惹きこまれる微笑み。
 思わず、自分のものにしたくなる衝動……と思っていたのだが。

 両側から襲いかかってくる兵士二人。
 つぶらな瞳の少年は、振り向きもせず、身をかわす。
 ひょいとかわされて、危うくバランスを崩しそうになるものたち。

 彼は丸腰のまま、最小限の攻撃をする。死角からの、急所突き。
 喉元を人差し指だけで突っつくと、瞬時に倒れていく。

 もがき、呼吸困難になる二人。少年は、金属類の小型用の火器を構えた。
 左手に添え、金具を引いた。弾が鎧を貫通して、心臓付近に命中した。

「……がはっ!?」 「ぐほはあっ!」
 
 断末魔の叫びを上げ、両目を見開き――その状態で息絶えた。

 仲間がやられたのを憤慨して、少年に襲撃する群れ。
 彼は屍の持った長剣を盗むと、奴らのほうへ投げつけた。
 遠心力をつけて、迫っていく。刹那、脇腹に引き裂かれ、抉り取られていった。
 血が飛ばしり、大地を汚していく。

 浅黒い兵士は吐血をし、少年を凝視する。

「この……卑劣野郎がっ……!」
 
 戦場で生きるか死ぬかで、卑怯呼ばれすることはないのだ。
 家族や仲間を想い、無我夢中になるものは誰でも同じ。
 この少年とて、想いを描いていることだろうな。
 私がそう思っていたけれど、次の台詞によって裏切られた。

「――無様に死んでね」

 彼は微笑をし、悪人めいた言葉を吐いた。
 別の死体の武器を掴み、勢いづけて投げた。
 圧力が増し、殺気をも増す攻撃に、集団が食らった。

 襲いかかる兵士を、難なく殺していく様。躊躇いすらもない、その微笑み。
 身震いがする、凍てつく空気。それを備え持ったもの。
 少年の周りには、すでに死体で埋め尽くされていた。

 私は――恐怖を抱いていた。目の前の、悪魔の男に。
 ただものではない。奴は――人間じゃない。人の皮を被った、魔性の鬼だ。

 少年はこちらに振り返り、笑顔で迎えた。

「あんた、殺されたい? 死にそうな顔をしているよ?」

 体中が、返り血で浴びていた。
 何もしなければ、大人しそうな少年であるが――。

 私に近づく足音。死の音色となって、刻んでいく。
 私は動くことができずに、相手の行動を見つめるしかない。

 額から汗が流れ、鼓動が激しく打つ。動いてくれ……頼む……!
 必死に願っていると、私の前にレオニダスさまが立った。
 
 少年は立ち止まり、彼を見据える。笑みを絶やすことがなかった。

「……お前、人を殺めるのは何度目だ? 雑な殺し方をする……」

「そういうあんただって、そうだろう?
 おれを非難する前に、自分のことを考えてみたら?」

 レオニダスさまの怒りに、少年は冷静だった。

 背を向けて、立ち去ろうとする彼に、私の体がとっさに動いた。
 男子にしては、ほっそりとした右腕を掴む。血液によって、滑りが生じる。

 少年は振り返り、私を見下ろして笑う。

「おれを素手で掴もうとするなんて、大胆だね」

 動揺しないとは、ぶれない男だ。私はやんわりとした口調で脅す。

「……ここにいた事情(わけ)を聞かせてもらいましょうか?
 抵抗するなら、婿入りにさせないように傷つけてやりますが?」

 それを耳にしたのか。一瞬、拍子抜けをする。
 私と私の背後にいるレオニダスさまを比べ、納得をする。

「へえ。なるほど、そういう関係……。どこの世界でも、珍しくないけどね」

 変わっている。普通なら、毛嫌いをするだろうに。

 レオニダスさまは、信じられないような目で、少年を見ている。
 無理もない。奥さま一筋な彼にとっては、その言葉は異様だ。

 ……レオニダスさまと、一線を越えてはならない。それは、わかっている。
 私の少年の右腕を持つ手に、力がこもった。

 若干、表情が歪んだが、平静を保っているようだった。
 全く、いい度胸だ。肝が据わっている。


「女神は悪魔」(レオニダス視点)

「あなたに、選択権はありません。私たちと同行させてもらいますよ」

 クレイトスの言うことに、少年は目を伏せていた。
 落ちつきを払い、暴れることはない。

 肯定として受け止めたのか。
 クレイトスは相手の左腕を掴んだまま、もう一方の片腕を引き、麻の紐で縛り付けた。

 抵抗をせずに、彼の思い通りになっている少年。
 あっという間の呆気なさで、手首を縛られ、御用となった。

 私はそれを確認した後、歩行をした。
 クレイトスと、彼に連れられる少年が追いかけていく。

 戦闘を終えた陣地へ進むたび、仲間の複数の好奇な目が。
 言うまでもなく、奇妙な格好をした少年に注がれて。

 背中に両手を縛られた格好。捕虜扱いの身。
 つぶらな黒の瞳に感情はなく、凍てつくさだけが残る。
 彼らに無表情で返し、俺たちに合わせての歩行。
 恥をさらしても、真っ直ぐ、前を向いていた。

 戦場での腕を見る限り、逃亡するのは可能と思っていたのだが――。

 普通なら、反抗をするもの。……場馴れしているのか?
 クレイトスが彼の身柄を確保し、歩かせている。

「なぜ、逃げなかった?」 
「逃げたほうが良かった?」

 俺の問いかけに、逆に、質問返しをされた。
 こんなときでも、余裕な男だ。

「暴れたほうが良かった?
 でも、それでは、あんたたちが困るだろう?」

 考えを読み切っての返し……策士か。

 不信感なのか。クレイトスは緊張した面持ちで。

「何を企んでいるのです?」
「それを聞いてどうするの? おれを殺すの?」

 少年はふいに笑って、挑発をした。

 わざと、俺たちを怒らせようとして……悪趣味だ。
 だが、翻弄させまい。自分に言い聞かせつつ、少年に断言をする。

「いや。お前は、嫌でも我々に協力するしかない。働いてもらおう」
 
 その命令に、彼は見上げた。つぶらな瞳に、妖しき光を宿す。

 吸い込まれそうな闇。惹きこまれそうな、危うさ。
 この男は一見して、戦いに無縁そうな女神。しかし、人の心を弄ぶ悪魔だ。
 扱い方を間違えれば、滅びを与えるだろう。現に、その微笑みが曲者だ。

「良いのかい? 殺すかもしれないよ?」

 少年は、そんな俺を迷わせようとしている。

 クレイトスが不安げに、こちらを見た。その海色の眼を受け止め、目配せをした。
 ――これは賭けなのだ、クレイトス。この少年との、取引……。

 心の想いが伝わったのか。クレイトスは俺から目を逸らし、俯いた。

 素直に引き下がる彼から離れ、少年と対面する。
 正面に向かっての、本音による否定。

「それはない。今のお前には――己の利益になるものがない」

 鋭さのある厳しい口調に、少年は唖然とした。
 微笑みの仮面が外れた、素顔ということか。


「悪魔の誘惑」(クレイトス視点)

 少年こと、医王田理音を捕えての翌日。
 私はレオニダスさまに頼まれて、彼の監視役をすることになった。

 拘束した両手を解放するなんて、あの方は何を考えているのか……。

 返り血まみれの服装を取り換えの、私と同じキトン姿の少年。やはり、戦士から程遠い。
 若干、私よりも背が高く、見下ろされる形になる。

「本来なら、処刑をされる身……。半神の恩恵に、感謝しなさい」

 理音に向かって、悪態をつけた。手持ちの模擬剣を渡す。

 あの方の特別を受けているのが……気に食わない。

「半神……。そう呼ばれているのかい。あの隊長さんは」

 理音は楽しそうに理解をすると、武器を受け取った。
 左手で構え、ふた振りをした。

 なじませるために、試しているのだろう。そういえば、あの火器を握る手も――。

「左利き……」
「そうだけど、何か?」

 私の呟きに、理音は無表情で述べた。知らずに、言葉が出てしまったようだ。
 この男が左利きであるならば、逃れられない宿命を背負う。それは――。

「穢れを成すものですか」
「……穢れ?」

 私の言葉に、彼は僅かに表情を変えた。予想もしないものだったかもしれない。
 ちょっと、驚いている風に捉える。

 始めてではないのか? 人間らしくなるのは?
 私は相手の感情を読めたのが、嬉しく思う。つい、昔からの言い伝えを語る。

「左は悪魔、右は神の象徴です。
 左利きの場合、魔に命を吸われる呪いを受けます。
 病弱して、死にいたりやすくなるのです。
 私たちはそうならないように、常に右利きで、済ましているのです」
「……そう」

 興味を失せたのか。理音の反応が薄い。
 迷信と思っている様子だ。

 理音のスタイルは、素早さを重視したものだ。
 攻撃を防ぐ盾がないため、防御力が低くなるのが難点。
 ただし、片手持ちと両手持ちの2つを切り替え、状況に応じやすい。

 手始めに、私の挑戦といくか。腰の鞘から模擬剣を引き抜き、右手で持つ。

「理音さん、対戦相手をお引きいただけますか」

 私は真っ直ぐ、理音を見据え――願いを込めて言う。

 いつもなら、剣と盾のバランスの良いスタイルにする。
 だが、相手はそれをしない。私は不公平になるのが嫌いだ。
 今回は、理音に合わせて行うと思う。対等にいきたいからだ。
 それを知っているのか。彼は挑発めいた言葉を述べる。

「君が最初の人かい? 怪我をするよ?」

 自分の腕に、大した自信だ。その鼻をへし折ってやる。

「舐めてもらっては困りますね。これでも、私はラケダイモンの戦士です」


「悪魔と天使」(レオニダス視点)

「おいっ! あっちで、“女神”と“美少年”が戦っているぞ!」
「面白そうだなっ! おいっ!」

 少年兵士らの嬉々あるかけ声に、俺は眉をひそめた。
 まさかと思うが――。急いで、問題の場所へ駆けつけた。

 歓声を上げる、少年兵士たちがいた。
 興奮が抑えられないのか。前へ前へと詰め込むように、押しやっている。
 完全なるギャラリー化に、俺は茫然としていた。

 その中心にいる二人の戦士――若き少年らの乱舞。

 理音は、冷静かつ状況を読み解き、斬りと突きを交互に変える。
 クレイトスの襲撃に応じて、難なく対抗をしている。
 流れに身を任し、器用に行っているのを。

 彼は澄ました顔つきで、相手を窺う。
 つぶらな黒の瞳に、感情めいたものは見えない。
 あるのは、虚無のみ。

 対して、クレイトス。防がれた焦りからなのか、苦悶の表情になった。
 理音の僅かな隙を狙おうと、がむしゃらに攻めていく。

 横斬りや斬りつけなどをするが、模擬剣の刀身で弾き返される。

 頭から、滴り落ちていく汗。
 目に入りそうになるのを、クレイトスは堪えていた。

「――それで、終わりなのかい?」

 理音の余裕ぶった態度に、クレイトスは歯を食いしばる。

「まだだっ!」

 敬語を捨てて、否定をした。
 背後へ飛び、腰を低くしての自走。
 踏み込んでいる途中で、理音は模擬剣を放り投げた。
 天高く舞い上がるそれと同時に、疾走し始めた。

 互いに、接近する彼ら。先に仕掛けたのは――クレイトス。
 下段の構えで、理音を翻弄させようとする。

 逆手の攻め方に、彼は驚いていた。
 とっさに胸を反らした瞬間、服の素材を掠め取った。

 僅かに切り裂かれたキトンに、クレイトスはほくそ笑む。

「さすがに、避けましたか」

 皮肉ぶった、贈り言葉だ。果たして、向こうの反応は――?

 理音はそのままの状態で、バク天をした。
 身軽となって、回転をしていく。
 その勢いで、飛び蹴りのカウンターを披露する。

 構えるすらもなく、クレイトスの胸元に命中。
 小柄な体が、吹き飛ばされていった。

 着地した理音の頭上に、模擬剣が落下していく。
 慌てることがなく、柄をキャッチ。

 理音の芸に、周囲のどよめきが起こった。

「すげえっ……!」 「あいつ、人間か……?」
「おおっ……! 神よっ……!」

 普通の反応、明らかに失礼な反応、天を仰ぐ反応。
 様々なものたちに、理音は無表情で通していた。
 その足取りは、倒れているクレイトスのほうへ。

 呻き声を上げる、美少年。近づく彼に、悪態をつける。

「剣技の対決に、格闘だなんて卑怯ですっ!」

 不満を露わにし、きつく睨みつけた。

 負の感情をぶつけてくる相手に、理音は嗤う。

「戦場では、何が飛び出してくるのか、わからないよ。
 もっとも、卑怯と言うのは、負け犬の台詞だね」

 女神に相応しい、全てのものを虜にする微笑――いや、悪魔の微笑みか。

 クレイトスの瞳に、動揺が走っていく。
 傷ついた表情をして、対戦相手を凝視した。
 そんな彼を見下ろし、理音は淡々と告げる。

「殺されたくなかったら、せいぜい購うことだね」
 
 この男にしては珍しい、いたわりのある厳しきアドバイスだ。

 クレイトスに背を向けた途端、見守っていた少年兵士たちが熱狂する。

「……つ、強いっ!」 「お見事ですっ!」 「…………かっこいい」

 無数の熱っぽい眼差しが、理音に集中。
 視線を注がれても、彼は平然としていた。


「悪魔は誘いに乗る」(クレイトス視点)

「俺も混ぜてくれよっ!」

 歓声が湧き上がっている頃、第三者の声が飛び交う。
 少年兵士らが、慌てて道を譲っていく。
 二列になる彼らを退けて、二人の男がこちらへ歩いてきた。
 どちらも、20代前半くらいだ。

 一人は、短く切られた黒髪。がたいの良い、長身の男。
 同色の瞳は異様に大きく、フクロウの如く。
 見るもの全て、萎縮する力を持つ。

 額から頬まで、縦一直線に斬られた傷跡。右目尻のギリギリ寸前。
 そこまで通っているところが、戦士の勲章として残っているのだろうか?
 風の便りでは、失明に至りそうになったとか。
 いずれにしても、真相は闇の中だ。

 彼の名は、フェイディアスさま。レオニダスさまの副官だ。
 別名、“フクロウ”と呼ばれている。理由は、ギョロっとしているところ。

 先ほどの声は、云うまでもなくこの方。
 むやみに突っ込むところが、この方らしい。

 もう一人は、彼よりも、やや低めの細身の男。
 耳元が見え隠れする、鳶色の髪。流れるような、柔らかい髪質。
 薄茶色の、アーモンド形の瞳。どこか、優しそうな感じだ。

 副官の後をついていく、補佐のようなものか。
 黙ってついてくる青年の名は、パイアキスさま。彼のメイラクスだ。

 やってくる二人に、理音は怪訝そうになる。

「……誰?」 

 ここに来て、まだ浅いこの男。知らないのは、当然だ。

「前にいるのは、フェイディアスさま。レオニダスさまの副官です。
 その後ろにいるのが、パイアキスさま。フェイディアスさまのメイラクスです」

 私による簡単な自己紹介に、理音はしみじみと呟く。

「副官に、メイラクス……。どの世界でも、そういう関係があるんだね」

 嘲りというより、むしろ、納得に近い。
 嫌気というものが、全く含まれていない。やはり、この男は変わっている。

 フェイディアスさまの、彼に対する評価。

「女神さまは、自信があるんだな。そんな細腕で、よくそこまでできるものだ」

 理音の顔立ちはどちらかといえば、見方によれば女顔に取れるし、中性的にも取れる。
 整って、さらに色白。見過ごすわけにも、いかないだろう。
 軍隊の中で、とりわけ目立つというのもあり、狙われやすい。

 私も同じような遭遇があるため、気持ちがより察する。
 理音の誇りを傷つけると、少々、心配するのだが――。

「筋肉だけの大馬鹿ものは、外見でしか判断できない……立派だよ」

 当の本人は、薄らと笑っていた。完全に、皮肉った言葉だ。

 周りがざわつき始めた。小声で、何やらと話し声が聞こえる。

「あの女神、とんでもない……!」 「今なら、引き返した方が……!」

 彼らが心底、焦っているのは無理もない。
 理音の前にいる相手は、半神レオニダスさまの副官――。

「はっ! 挑発したのに、涼しい顔をしてやがるっ!
 ますます、気に入ったよっ!」

 まんざらでもなかった。理音に対して、敬意を示している。

「……フェイディアス」 

 パイアキスさまが困った顔をしていた。
 ため息交じりに、相手を見つめる。

 フェイディアスさまはそんな彼を一瞥し、豪快に笑った。

「なーーに。強い奴と戦いたくなるのが、性じゃないのか?」

 好奇心旺盛で、命知らずなお方だ。

「というわけだ、女神さま。お前に勝負を申し込む」

 気分の良いフェイディアスさまに、理音は微笑みを交わす。

「無駄にならないように、気をつけることだね」

 何かしら企む、その笑顔で。


「悪魔たちの乱戦」(レオニダス視点)

 ――理音といい、フェイディアスといい、何を考えている?
 俺たちが見守る中、彼らの決闘が始まっていた。

 身軽な動きで相手を誘いつつ、剣技を行う理音。
 つぶらな瞳は、闇に覆われ、感情の読みが捉えにくい。

 彼の攻めに、フェイディアスの両目が閉じられていた。
 精神統一な、刀身の受け止め方。無駄がなく、全集中な対応。
 気持ちが入っているのか。頬が緩んでいく。

「いいねえ、女神さま。お前の剣技は、変則さがあっていい。
 並の兵士なら、翻弄されるだろうな。俺ならともかく」

 楽しそうに、嬉しそうに、繰り返す一撃を防ぐ。
 相手がわずかな動きになったのを計って、カウンターを行う。
 重みのある、突き攻撃が、理音の胸に襲う。

 彼の体が回転し、身をかわした。先ほどいた場所へ、空振りをして。
 フェイディアスは前かがみとなり、バランスを崩す。

「光栄だよ」

 理音の足蹴りが、がら空きになった背中へ――しかし。

「甘いんだよっ!」 

 背後を振り向かず、模擬剣で防御し、押し倒した。

 力いっぱいに押し出され、理音は後方へ飛ばされた。
 尻餅をつき、両手で起き上がろうとする彼の顎に、剣先が当てられる。

「俺じゃなかったら、やられていたよ。
 大した奴だよ、お前さんは。怪我はないか?」

 実用剣だったら、理音の足に支障があっただろう。
 脚力は――大事ない。

 瞬時に、立場が逆転され、目が丸くなるギャラリー。
 息を呑み、敗者となった理音に集中する。
 彼らの視線を気にせず、フェイディアスに微笑を。

「見ての通り、無傷だよ」
「はっはっはっ! 違いねえっ!」

 彼は豪快に笑い、理音の肩を二、三回叩く。
 衝撃とともに、若干、顰め面をしていた。

「じゃあな、女神さま。これからも、もっと面白く魅せろよ」

 愉快になって立ち去る男と入れ替わりに、クレイトスが近づいてきた。
 理音に対し、痛烈な批判を並べる。

「――愚かなことです。フェイディアスさまに、挑むなんて。
 あの方は、仮に半神の副隊長。自惚れは、大概にしなさい」

「副隊長さんからの申し出を、勝てそうにないから断る?
 根性なしと認める……それこそ、愚かだよ」

 肩をすぼめる姿に、クレイトスは不機嫌になった。
 反省の色を見せない少年の、ほっそりとした腕を掴む。
 無理やり立たせると、引っ張りつつ、その場を後にした。


「悪魔の未知数」(クレイトス視点)

 ゲリラ豪雨の中、私たちは、テントへ駆けつけた。
 転がり込み、準備していたタオルを理音へ手渡す。
 彼はそれを受け取り、丁寧に、水分を拭き取る。
 湿った髪は、やけに艶っぽい。誘っているかのような、雨雫。

 キトンが肌に引っつき、官能さが滲み出る。
 まだ、濡れきっている彼に、私の感情が乱れそうになる。

 中性的である一方、成人の体つきだ。
 成長期ではないところを見ると、私より上――大人なのか。

 タオルに見え隠れする、つぶらな瞳が妖しく光る。

「……発情したのかい?」

 心を見透かされたのか。面白半分で、問いかけてくる男。
 その証拠に、発言に嗤いが含んでいる。

 この男は――半神と私を翻弄する悪魔だ。
 挑発に乗ってはいけない。

「思い上がりは、よしなさい。
 あなたに忠告しますが、無謀な真似はやめることです。
 私ならともかく、上のものに対抗しようものなら――返り討ちですよ」

 私は厳しく言い、それから、空を覗き込んだ。
 地上を轟く、雷鳴。それは、神々の怒りの声なのか。

「基本的に挑むのが、おれのスタンスだよ。
 たとえ……向こうが強くてもね」

 空を見つめている私に、理音の発言が飛び交った。
 ポシティブな内容であるが、どこか、弱々しく感じられる台詞。

「……難儀な性格ですね、あなたは」

 私は立ち止まり、理音に振り返った。

 微笑みがなく、悔しさが滲み出た表情。
 つぶらな瞳の奥は、怒りの光があった。
 彼の本当の素顔に、私は目を奪われ――。

 突如、水音とともに、草をかきわける少年兵。
 こちらへと、血相を変えて、やってくる。

「どうしまし――」 

 私が言い切らないうちに、少年兵の首が飛んだ。
 宙に浮かび――草原へ叩きつけられた。
 目を見開き、こと切れた生首。

 その無残さに、状況が一変とする。すぐさま、外へ飛び出す。
 私の目に映るのは、いやらしい目つきをした隊長の姿。
 模擬剣ではなく、実用剣を装備している。
 我々の仲間ではない、他国の敵。侵入者だ。

「噂の美少年か。飽きのこない、堪能な体をしているな」

 そう言って、私を舐め回し、下品に嘲った。
 私は嫌悪感を抱き、後ろへ下がっていく。
 入れ替わりに、理音が大地に踏み入れて。

 彼はしゃがんだ態勢で、回し蹴りを放つ。
 足を引っかけられ、隊長は尻餅をついた。
 その隙に、首筋に手刀を落とされる。

 血走った眼が理音を凝視し――頭ごと倒れた。
 涎を垂らし、泡を吹く男を、彼は冷ややかに。

「正当防衛だよ。己の不運を嘆くことだね」


「高みゆく悪魔」(クレイトス視点)

 豪雨の落雷。二つ、三つと地上へと貫く。
 無差別な位置に、繰り返す――神々の怒り。

 理音は失神した敵を、力いっぱいに蹴り上げた。
 身体が吹っ飛ばされ、足元に転がった。
 見覚えのない、誰かの“両足”――。

「虫を殺さぬ、きれいな顔をして――えげつない真似をするよなっ!」

 下品な笑い声とともに、背後に腕を捕らわれた。
 強引に引き寄せられ、羽交い絞めをされる。
 振り解こうと抵抗するものの、相手の力が強く、太刀打ちできない。

 踏み出す、無数の足音。理音を囲い込む、兵士たち。
 彼は驚愕した表情もせず、むしろ、全てを虜になる微笑みだ。

 そんな彼を眺めているのは、足の主。
 皮肉な笑みをする――鋼鉄の鎧をまとった指揮官。
 気絶した部下をさけ、彼の元へ近づく。
 甲冑の軋む音が、恐怖を呼び覚ますものと化して。

 一人しか配置してなかったのは、私たちをおびき寄せる罠だったのか。
 苦渋になる私と、一方で、微笑を絶やすことがない悪魔。
 模擬剣を引き抜こうとするが。

「おっとっ! 動くなよっ! こいつを傷つけたくなければなっ!」

 その言葉に、理音は私を一度見――それから、視点を戻す。

「随分と、執念深いね。男のストーカーは、嫌われるよ」

 どんな逆境でも、余裕綽々の男だ。
 私のミスであっても、決して、態度を崩さない。

「理音さんっ! 私に構わず、逃げてくださいっ!」
「君を見殺しにすれば、隊長さんに殺されるよっ!」

 殺しを躊躇わない男にしては、やけにムキだ。
 素直ではなく、負けず嫌いな――医王田理音。
 私やあの方を欺く、あの悪魔だろうか。 

 指揮官は大笑いをし、動かない彼を殴りつける。
 避けることをせず、左頬に食らう。
 打撲が生まれ、口端に血が流れた。

「余裕ぶってんじゃねえよ。こっちが有利ってんのに……なあっ!」

 最後を強調し、模擬剣を無理やりぶんどった。

 倒れもせず、見据える眼は、憐れみの光。
 敵に対するの、感傷。

「大勢で、勝ったつもりと? その対面、弱さを認めるものだよ」

 軽蔑し、嗤う悪魔。何事にも、ぶれない。

 指揮官の拳が震え、反対側の頬を殴打。
 さらに、腰や鳩尾にも容赦なく、殴り続ける。
 指揮官は肩で息をし、膝をつく彼を見下ろす。

「……大勢の部下を殺したのは、お前だったな。
 あのときの礼を返してもらうぞ」

 鞘から剣を引き抜き、彼の首を捉え――られなかった。
 振りかざそうとしたまま、硬直している。
 背中には、刃が刺さっていた。滴っていく血が、生命を失う。


「真なる悪魔」(レオニダス視点)

 敵の指揮官の背に、俺の投げた武器があった。
 貫通し、したる血液。勢いよく、流れていく。
 膝をつく理音に、返り血を浴びらせるはめになったが――仕様がない。

 指揮官の体が崩れ落ち、絶命となった。
 うつ伏せになる戦士の亡骸に、その場にいる全員が放心状態だった。

「うがっ!?」 「がはっ!?」

 一人、二人と続く、苦痛の叫び声。
 クレイトスを捕らえた兵士を含め、倒れ込んだ。

「がら空きだったぜ」

 不敵な笑みをする、フェイディアス。
 鋭くも、けしかける剣筋は、獲物を捕らえるフクロウの如く。
 狙ったものは、外さないのが、この男らしい。

「ごふっ!?」 「ふがあっ!?」

 彼に続き、援護攻撃をするパイアキス。
 しなやかな動きで、奴らを薙ぎ払う。
 柔らかい笑みをしつつ、追跡をしていく。
 己のメイラクスに、彼は嬉しそうに、奴らに斬撃を繰り返す。

 さらに、援軍として、我々の兵士たちが集まった。
 戦意喪失と成り果てた、敵陣の中へ誘う。

 敵味方入り交えての乱戦。急いで、理音の元へ駆け寄る。
 利き手で支え、起き上がろうとする彼だったが、バランスを崩す。
 後ろへ倒れ込むのを、俺がすぐさま支えた。

 クレイトスが、こちらへ駆けつけてくる。
 理音の顔を覗き込んだと思ったら、怒りに満ちた顔つきへ変わる。
 胸倉を掴み、純粋な怒りをぶつける。

「私を置いて、逃げれば良かったっ! なのに、なぜ、逃げなかったんだっ!?
 あんな、屈辱を受けてまで――なぜだっ!?」

 初めて見る、クレイトスの激情。敬語を捨てて、吐露するメイラクス。
 対して、理音の面持ちは――。

「……さっき、言った通りだよ……。 わからないのかい……?」

 痛々しくも、感情を押し殺そうとする――笑顔。
 本来の、素顔なのか。彼のつぶらな瞳は、温かみのあるものだ。

 お互い、動揺を隠せなかったのか。
 俺もクレイトスも、目を奪われていた。優しさ溢れるものに。



 二日後。回復をした理音は、異国の服装に着替えていた。
 ホルスターに収まった、小型の銃器。
 俺に振り返ると、笑みを浮かべる。

「そろそろ、退散するよ。お邪魔するといけないから」
「その前に聞きたい。お前の本当の目的はなんだ?」

 立ち去る前に、一番に聞きたかったこと。
 俺やクレイトス、その他全てを翻弄した元凶。
 こいつが引っ掻き回してまで、得たいものは一体何なのかを。


「悪魔の影引き」(レオニダス視点)

「婿殿。理音殿は、私の約束のためにしてくださったのだ」

 突如、出現する俺の愛しい妻――リュクネ。
 テント内に入り込んでいく彼女の姿に、俺は戸惑いを隠せない。
 ――なぜ、彼女がここにいるのだ?



 闇夜の、月明かりの下で、理音は一つの影と対面していた。
 刀身が重なり、金属音が響く。凄まじく、激しい接戦。

 真っ白なフードを被った、肉付きの良い旅人の女。
 敏捷度を増す、鍛えられた足。踏み外すことがなく、追跡していく。

 楽しんでいるのか。彼女の口角が上げていた。
 標的相手に、攻めを崩さずその様は、豪傑の戦士。
 切れ味が、徐々に上昇していく。

 理音は反撃で、精いっぱいだった。
 応対しつつも、くまなく、チャンスを探っていた――が。

 彼女の豪快な一打が、理音の手首を捉えた。
 激しく打たれ、模擬剣が空中に飛んだ。高速回転をし、剣先ごと落下する。
 無防備になった理音の首筋に、彼女の模擬剣の刃が当てられる。

「守りが甘かったな」 

 フードが取れ、あらわとなった端正のある女の顔。
 慈愛に満ちた笑顔は、男なら見惚れてしまうだろう。
 後ろ髪をバレッタで止めた、妙齢の女性――。

 断言され、理音は両目をつぶる。

「……参ったよ」 左

 手首を押さえ、大人しくなる。
 若干、苦痛の色がある面顔。そんな青年に、女は大笑い。

「あっはっはっはっ! 素直に認めるところが、図太いっ!」

 石造りの円柱に立つ、若き男女。先ほどの戦いが、嘘のようだ。

 彼女は引き締めた表情となり、相手の両肩を掴む。
 鼻先に触れるほどの距離で、条件を突きつける。

「――理音殿。四日の間、我が夫とメイラクスを守れ。
 途中で、死なせたりすれば、そなたの命はないと思え。
 それが、そなたの罰ゲームだ」


 リュクネは俺に、理音との身の上事情を熱く語った。
 その後、理音の背中に向けて、勢いよく叩きつける。

「理音殿! 四日間、ご苦労だったなっ!」
 強烈な張り倒し方に、彼は前のめりになりそうになって。 


                            【end】


(……というわけで、シークレットな登場人物とは、黒幕だったリュクネさんでした!
 あの理音さんを苦もなくあしらうとは、さすが《牙を砕く者》!
 そして、約束したことは、きちんと守る理音さん。
 冷酷非情かと思いきや、意外と、律儀な方でした……
 
 あらためまして、両性こたつむり様、1万字を超える大作、本当にありがとうございました~!!)
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